工房, ブティック, ミュージアムと時計三昧の旅へ
スイスの高級腕時計と聞くと、それだけでワクワクする人は少なくないと思います。パテック・フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタンをはじめ、時計好き垂涎のメーカーはスイス、それもジュネーブからジュラ山脈に沿ったスイスの西側に集中しています。
17世紀にフランスから伝わってきた時計産業は、ジュネーブを中心とした宝飾細工の技術が加わって始まったといわれています。そして、ジュネーブでの閉鎖的な精密時計作りとは裏腹に、ジュラ山脈中ほどのル・ロックルで時計工房を始めたダニエル・ジャンリシャールが、広く一般の農民へ冬の仕事として時計技術を教え、さらに合理的分業システムと機械化を導入したことによって、この地方一帯に時計産業が広まったのです。
幸い、スイスはヨーロッパ屈指の鉄道王国、スイス中ほとんど鉄道での移動が可能です。工場からブティック、各メーカーのミュージアムなど時計三昧の旅に出かけませんか?
鉄道移動ルート 路線図 / モデルプラン
南西のジュネーブから北部チューリッヒまで、途中ローザンヌ、ヌーシャテル、ベルン、ルツェルンを繋ぐ鉄道ルートです。
ニヨン、ジェントッドはジュネーブ〜ローザンヌ間に位置し、ヌーシャテルからラ・ショー・ド・フォンとル・ロックル及びビール / ビエンヌへ、チューリッヒからシャフハウゼンへ路線が伸びています。
以下記載順通り、又は逆ルートも可能です。各都市とも宿泊施設が充実していますので、1都市1都市泊まりながら旅をすると、思わぬ発見があるかもしれません。
スイスを鉄道で周遊する際は、レイルパスが便利です。用途により、複数種類のパスがありますので、コチラからご覧ください。見積もりフォーム、又はメールにてお問合せ、ご依頼ください。
ジュネーブ Geneve
レマン湖畔に位置し、国際的に重要な機関が集まっているため、「世界一小さな大都市」の異名を持つジュネーブ。フランスから時計産業が伝わった、時計産業の聖地と呼ばれる都市で、スイスの時計はここからすべてが始まっています。
最高級時計の証、ジュネーブ・シールの刻印を受けているパテック・フィリップ・ミュージアムとヴァシュロン・コンスタンタンのThe Maison、 18のメジャーな高級時計ブランドを持つ、スウォッチグループのスウォッチ・ミュージアム「シテ・デュ・タン」があり、全て見学が可能です。
また、スイス時計のほとんどのブティックが市内に揃っています。 そのほとんどが中心部に密集していますので、ジュネーブ・ウォッチ・ツアーに沿って、効率よく見て廻ることが出来ます。
郊外では、ジュネーブから鉄道で7分のレマン湖畔ジェントッドにある、見学可能なフランク・ミュラーのWatchland、ローザンヌへの途中ニヨンにはウブロの工場があります。
ローザンヌ Lausanne
ジュネーブから鉄道で約40分、レマン湖北岸の中央に位置するローザンヌは、ローマ時代から栄えた歴史ある古都。国際オリンピック委員会とオリンピック・ミュージアムがあるため、別名オリンピックシティと呼ばれています。
この町にあるのは、ジュノー時計博物館。時計メーカーであり、収集家でもあったジュノー家のコレクションを展示しています。ジャガー・ルクルトのリヴェルソ初期モデルや、個人収集家としては最大のオメガ・コレクションなどがあります。
ラ・ショー・ド・フォン La Chaux-de-Fondsとル・ロックル Le Locle
ラ・ショー・ド・フォンは、ローザンヌから鉄道でヌーシャテルで乗り換え1時間少々、フランスとの国境近く、ジュラ高地で時計産業の中心として栄えた町。近代建築の父として世界的に知られる、ル・コルビュジェの生地としても有名です。
この町にあるスイス最大の国際時計博物館は、時計学校の中に資料館として造られたことにはじまります。
近郊のル・ロックルと合わせ、時計産業都市としてユネスコ世界遺産に登録されています。
ル・ロックルにも、貴族の館を改装した時計博物館があります。
この2つの町を含むヌーシャテル地方は、一大時計産業地域でもあり、観光局では各種ユニークなウォッチツアーを催しています。個人でめぐるのも良いですが、こういったツアーを利用して効率よく巡るのも一興です。
ビール Biel/ビエンヌ Bienne
ラ・ショー・ド・フォンから鉄道で約50分、ビール湖畔に位置し、13世紀にバーゼルの領主司教によって築かれた中世都市です。オメガやスウォッチ本社があるこの町では、それまで一般公開されていなかったオメガ本社前の時計博物館を、2010年全面リニューアルして一般向けとなった、オメガ・ミュージアムを訪れます。
さらに、この町から鉄道で片道30分のサン=ティミエ(St-Imier)には、ロンジン・ミュージアムがあります。
ベルン Bern
ビール / ビエンヌから鉄道で約30分、旧市街がユネスコ世界文化遺産に登録されたベルンでは、ミュージアムやブティックから少し離れて、時計塔(ツィットグロッゲ)を見学します。15世紀には、すでに時計塔として活躍しており、現在も時を刻み続ける世界最大級の時計塔です。オートマタ機能(からくり人形の仕掛け)を備えるメインの大時計は16世紀に、その下の天文時計は15世紀より機能しているものです。
ルツェルン Luzern
ベルンから鉄道で1時間、スイスのほぼ中央に位置するルツェルンは、美しい湖とアルプスの山々が織りなす絵のように美しい景観から、観光客も数多く訪れるスイスの古都。時計工房やミュージアムが特にないこの町に立寄る理由は、世界の一流ブランドをそろえる、スイスで最も有名な時計宝飾店「ブッヘラー(BUCHERER)」があること。公的機関のスイス観光局がわざわざウェブサイトで説明するほど、時計大国スイスを象徴している時計店です。
特に、ロレックスの品ぞろえは比類ないもの。公式サイトはコチラ。
ジュネーブでお気に入りのブティックで時計を買うか、このルツェルンの老舗時計店で買うか、迷うところでしょう。
シャフハウゼン Schaffhausen
ルッツェルンから鉄道でチューリッヒ乗換えて約1.5時間、ドイツとの国境に近いシャフハウゼンへ。ライン川交易で古くから栄えたこの町には、IWC(インターナショナル・ウォッチ・カンパニー)があります。他の地域と違い、この町にはIWC1社しかないため、スイスの人々はこの会社のことを「シャフハウゼン」、IWCの時計を「シャフハウゼン・ウォッチ」と呼んでいるそうです。
数多いスイス時計で、唯一ドイツ語圏のIWCミュージアムで、その魅力にどっぷりつかりましょう。
最後は鉄道で約40分、スイスの玄関口チューリッヒへ移動して、旅の終了です。
バーゼル Basel〜おまけ
工房やミュージアム探訪からは外れますが、バーゼルも時計をめぐる旅のスパイスとして大事な都市です。年に一度ここバーゼルで行われるバーゼル・ワールド(通称: バーゼル・フェア)は、世界最大の時計と宝飾品の見本市。時計業界のみならず、一般人の入場も可能なため、話題の新作時計を求めて訪れる訪問客は、10万人を超えるともいわれています。ただし、開催時期はバーゼル市内はもちろん、近郊都市までホテルが満室になるため、訪れるには綿密な計画が必要です。
チューリッヒ、ジュネーブに次ぐスイス3の都市で、どの都市からもアクセス可能です。