欧州鉄道旅行ガイド

ヨーロッパ鉄道旅情

ペスカーラ中央駅

チケット選びから乗車まで〜出発前の準備〜

区間乗車券とレイル・パスの違い

区間乗車券は、ある都市から別の都市までの乗車券のこと。距離によって運賃が設定され、特急など特別列車を利用するときは別途座席指定券を購入します。

一方、レイル・パスは、原則各国国鉄の全行程を網羅する総合乗車券として利用します。

  • ヨーロッパ全体を周遊するもの
  • 1か国限定や2〜4か国周遊など訪問国による違い
  • 連続通用タイプと乗車日を選ぶフレキシー・タイプの違い
  • 2名以上同一行動で割引になるセーバー・パスや3名以上がさらに割引になるパーティー・パスといった旅行人数による違い

など、旅のスタイルに合わせて様々なものがあります。距離による料金の違いはなく、利用する日数や有効期限により料金が変わります。一日の始めに乗車したら、その日は距離に関係なく、何度でも乗り放題なのがレイル・パスです。

区間乗車券同様、特急を利用するときは、別途座席指定券を購入しますが、レイル・パス利用時だけに適用されるパス・ホルダー料金という割安な料金設定があるのが、区間乗車券と違うところ。また、鉄道以外の施設利用(私鉄、遊覧船、美術館入場etc)にも様々な割引特典があります。

一般的には、旅行日程内で鉄道利用が2区間程度なら区間乗車券利用、3区間以上あるいは鉄道で1か国〜数か国周遊というときにはレイル・パスが、便利でリーズナブルとされています。どちらが自分の旅行に適しているかは、ご相談ください。また、具体的なレイル・パスの種類と特例を「レイルパス活用法」で説明していますので、あわせてご覧ください。

レイル パス表紙
レイル パス
座席指定券
区間乗車券

乗車券類の購入時期

各国国鉄の区間乗車券、レイル・パス、座席指定券は、日本で事前に購入が可能ですので、旅のプランと合わせてお問い合わせください。座席指定券は利用国、列車により発売日が異なり、一般的には乗車日の90日前、60日前から予約購入が可能となります。一部の国(スペインなど)では、乗車1か月前から予約購入を受け付けます。

乗車券・座席指定券は、ヨーロッパ到着後も、駅の窓口で区間乗車券や座席指定券を購入することが出来ますが、レイル・パスは「ヨーロッパ以外に居住している人」向けですので、ヨーロッパ到着後は購入できません。必ず、日本で事前に購入してお出かけください。

一方、各国国鉄以外の私鉄、トラムや特別な列車のチケットは、一部を除き日本で事前に購入出来ないものが多いので、現地でその都度購入することになります。

チケット選びから乗車まで〜ヨーロッパに到着したら〜

ヴェネツィア サンタルチア駅構内
サンタルチア駅 インフォメーション

日本では乗車時に改札を通りますが、ヨーロッパでは改札はなく、そのままプラット・フォームへ向かうことが出来ます。たいてい、入口にある電光掲示板にその日の出発、到着の列車時刻と発着ホームが表示されていますので、確認後は直接目的のプラット・フォームへ。チケットの表示クラスを確認の上、1等車、2等車の号車番号を確かめて乗車します。

駅のインフォメーション及び窓口は、乗車券や座席指定券の購入、レイル・パスのヴァリデート(後述)をするところです。また、日本同様さまざまなカフェやレストラン、ショップが駅構内にあり、出発までのひと時を寛ぐことが出来ます。

コイン・ロッカーを設置している駅は、ターミナル駅など一部に限られていますのでご注意ください。

プラット・フォームと列車

各地から列車が到着するターミナル駅は、プラット・フォーム数が多く、構内の移動に時間がかかるので、駅へは余裕をもって行きましょう。例を挙げると、ローマ テルミニ駅は、1〜24番線までが横に並び、25〜29番線は24番線のさらに奥に並んでいます。同じ市内にはもう一つのターミナル駅、ティブルティナ駅があり、こちらはプラット・フォーム間の移動に駅舎を上下する構造になっています。

地方の駅は、駅舎自体も非常に小さく、駅によってはほぼ無人状態。事前にチケットを持っていない場合、自動券売機を利用します。掲示板に張られた時刻表しかない場合があるので、自分で最新の時刻を下調べしておくことが必要です。

どの駅でも、プラット・フォームは列車の乗車扉よりかなり低く、2段ほどステップをあがって乗車します。

ヴァリデート及び検札

自動ヴァリデート機

駅に改札がない代わりに、ヴァリデートという確認作業があります。区間乗車券の場合は、駅のあちこちに設置されている自動ヴァリデート機に、チケットを挿入して刻印を押します。ヴァリデートをしないまま乗車すると、罰金対象になる場合がありますのでご注意ください。

レイル・パスは、自動ヴァリデート機に挿入することが出来ませんので、最初の区間乗車前に駅の窓口で「ヴァリデート、プリーズ!」と言ってスタンプを押してもらいます。レイル・パスの場合、ヴァリデートは最初の乗車時だけでよく、次の乗車の際は必要ありません。

レイル・パスには、パスポート番号を記入する箇所がありますが、自身で記入せずヴァリデートの際係員がパスポートと照らし合わせて記入します。さらに、署名が必要なレイル・パスは、係員の目の前でサインをします。

サンタルチア駅 インフォメーション窓口

レイル・パスへのヴァリデートは、時期により駅窓口が大変混み合うため、可能であれば前日に、乗車日当日なら、余裕をもって窓口へ向かいましょう。

「自分でヴァリデート手続きができそうにもない」という方のため、予め日本でヴァリデートまで済ませたレイル・パスのご案内が可能です(別途ヴァリデート手数料がかかります)。

ヴァリデートがすんだら、目的の列車に乗車します。出発後乗務員が乗車券類の確認のため検札に廻ってきますので、お手持ちの乗車券や座席指定券又はレイル・パスを提示します。

1等車と2等車

国によってサービスや設備は変わりますが、1等車は日本のグリーン車、2等車は普通車にあたります。車両に大きく数字が表示されていますので、自分のチケットに表示されたクラスを確認したら、その車両に乗車します。

イタリアを例にとると、特急「ES(エウロスター)イタリア」は路線によって、フレッチャ・ロッサ(Frecciarossa、赤い矢)、フレッチャ・ビアンカ(Frecciabianca、白い矢)、フレッチャ・ルゲント(Frecciargento、銀の矢)の呼び名があり、フレッチャ・ロッサには1等車、2等車の他、車両により、1等車の上のクラスのエグゼクティブやビジネス座席、2等プレミアム座席などがあります。

1等車は、通路を挟んで2-1の3席並び、ウェルカム・ドリンクと新聞サービスがあり、ダイニング・カーの利用が可能です。2等車は、通路を挟んで2-2の4席並び、有料のワゴン・サービスのみです。各車両とも前後、又は途中に荷物置き場(ラゲッジ・スペース)があり、スーツケースを座席周りに置くことなく運ぶことが出来ます。

ダイニング・カーが連結しているのは、フレッチャ・ロッサのみ(年々少なくなってきています)、その他はビュッフェ・カーになります。ダイニング・カーでは、テーブルに着席して食事を楽しむことが出来、ビュッフェ・カーではカフェ・スタイルの食事が楽しめます。

インターシティー(Intercity)など、その他の特急や急行もほぼ同様です。特急以外は明確にクラス分けがなく、ローカル列車では、単一クラスの場合がほとんどです。

デイ・トレインとは別に、ヨーロッパ内ではナイト・トレイン(寝台列車)が運行しています。例えば、スペインのバルセロナ〜グラナダ間、マドリッド〜リスボン間を運行するトレン・オテルは、人気のナイト・トレインです。シート・クラスは4つあり、リーズナブルな順に

  1. 座席でそのまま寝るリクライニング・シート。
  2. 上下2段ずつの簡易寝台が4つ備え付けられたツーリスタ・クラスは、男女別の4人相部屋で専用洗面所付き。
  3. 個室キャビンに専用の洗面台を備えたクラブ・クラス(1人部屋/2人部屋)。
  4. 個室キャビンに専用のシャワー、トイレを備えたグラン・クラス(1人部屋/2人部屋)は個室キャビンでの朝食と食堂車でのディナーが含まれます。マドリッド、バルセロナの駅では、空港のビジネスクラス・ラウンジにあたるSala Clubラウンジを利用できます。

ツーリスタ・クラスの部屋は男女別なので、カップルやご夫婦おふたり同室でという場合は、クラブ・クラスを利用しましょう。さらに、グラン・クラスはシャワー、トイレ付なので、ホテルの部屋と同じようにご利用いただけます。特に、サマー・シーズンには快適で便利です。

フレッチャ ロッサ
フレッチャ ルゲント
フレッチャ ビアンカ
1等車座席
ビュッフェ カー 1
ビュッフェ カー 2

私鉄

どこの国も国鉄に加え、私鉄がさらにローカルな場所まで、路線網を広げています。同じ駅名でも、国鉄とは駅舎が離れている場合があるので要注意。中には、国鉄と相互乗り入れの私鉄もあり、国鉄駅のホームから乗車することが出来ます。

時刻表

主な国の時刻表のウェブ・サイトを集めてみました。サイトによっては、タブレットやスマートフォン対応のアプリもありますので、事前にダウンロードしておくと旅先で便利です。

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